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万引き家族のKSatのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
一足先に試写会で鑑賞。

後半はかなり蛇足でダレるし、小さな役に高良健吾や池脇千鶴を配するような姑息さには呆れたのだが、その緻密な描写力はかつてない域に達したと言わざるを得ない。

明らかに汚い部屋で情景は展開されるのだが、よく見るとカビ臭くも由緒ある襖絵が見られ、風呂場の壁は小さなタイルで埋め尽くされている。歴史的な趣がそこにはある。

近藤龍人の撮影はもはや神の域に達した。被写界深度の浅い中でゆっくりと慎ましく送られるフォーカス、裸電球の橙や窓からの光の凄さ、適切な距離感で寄り添うような被写体との距離、時に現れるハッとさせられる切り返し、じめじめとした空気感。安藤サクラの裸体は赤銅色だが、外の空気は青いという対比。ついには一枚の画の中で天気まで変えてしまう。

その豊かすぎるほどの視覚的な幸福度の高さは、リー・ピンビンによるホウ・シャオシェン映画のようだが、時として笑ってしまうような運動を見せてくる。

そして、これは「そして父になる」でもあったことだが、本作にも「パリ、テキサス」を髣髴とさせる情景が、少なくとも二箇所、はっきりと存在していたことを明記しておこう。ああいった場面を今の日本で形を変えて再利用してしまう狡猾さには、呆れつつも拍手を送るほかない。ネトウヨなどに負けず、どうかこのまま胸を張って映画を撮ってゆけ。