これぞまさに是枝印。
冒頭から、作り物とは思えない世界に衝撃を受ける。セリフを言っているように感じさせない、台本があるように感じさせない、段違いのリアリティ。
少しずつ明らかになる、ひとつ屋根の下に暮らす疑似家族たちの関係性。種明かしして欲しい気持ちと、明かされれば家族の破綻に繋がるという不安に葛藤する。
どの役者も素晴らしいけれど、安藤サクラの凄まじさったら。彼女がうまいことは誰もが認めるところだろうけれど、監督との信頼関係ゆえ、今回ここまで引き出されたのだろう。
人の感情というのは言葉で表すことができるものだけではない、ゆえに、言葉ではない、芝居での表現が豊かさにつながる。だけど、ここでこの登場人物はこういう気持ちである、ということは、監督は役者に言葉で説明するしかなく、結局のところ言葉を越えた理解と表現力が必要になるため、なかなかできることではないからだ。
それにしても、冒頭で「パルムドール」と出たときには痺れた。
