モウドクウサギ

万引き家族のモウドクウサギのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
「汚ねぇ海街ダイアリー」は言い得て妙だが、普通ではない家族、いや、世間一般では家族という規範には当てはまらない集団の人間たちの話は、是枝監督の描き続けているモチーフだ。改めて家族の何たるかにスポットを当てているが、さて、今作が”社会批判”なのかというと、それも少し論点がズレている気がする。死人の年金受給を続けていたり、子どもを虐待していたり、童貞を殺す服の話題が出てきたり、確かにニュースやら何やらで目にした記憶があるが、それはさておき、諸々の事情から貧乏~貧困に陥っている人は日本にとどまらない。では、彼らは血も涙もない極悪人かというと、決してそうではなく、時に優しさや人情が、法や倫理では追随しきれない、カバリングできない状況が出てきてしまうもので、普遍的ながら問い続ける必要があろう歪みを描こうとしている。家族のみならず、社会の様相の非柔軟性を照らした一点をみても、「海街ダイアリー」から間違いなく、2、3歩押し進めてきた。樹木希林のおばあちゃんの無双感、泣かない子役の絶妙な上手さとリアリティーに目を見張る。
ただ、悲しいかな、今後は貧乏人や弱者を切り捨てる方向へ加速する事が、作品を通した後、将来が透けて見えるのがラストカットとともに脳裏に浮かんだ。