ちぴ郎

万引き家族のちぴ郎のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
血の繋がりなんて、どうでもいいことなのかも。
自分が産んだ子供だとしても、愛せなかったり育てられない人たちって悲しいことだけど実際にいるし、こどもがほしくてもできない人たちもいる。
この社会に適応できないひとたちだってもちろんいる。生きるだけなのにその時代とか国で決められてることやしなきゃいけないことってたくさんあるし、誰しもがそれに適応できるはずがない。
社会的に地位があるというような人たちからしたら、この家族は最低かもしれないけど、それでも一生懸命に生きてるし、人を愛したりしてる。
最近も政治家が子供は母親といるのが1番というような発言をしてたけど、いろんなかたちの母親と父親がいて、誰といるかなんて人それぞれで、相手が誰だって、大切にして、大切にされるっていうシンプルなことを他人が口出すことでは全くない。

池脇千鶴がいや〜な刑事役だったけど、自分が正義でしかないと思い込んでて、そうじゃない人を憎んですらいるような人もいるんだよな。
安藤サクラと池脇千鶴が対峙するシーンでは、つらくて涙が止まらなかった。
子供に万引きさせる親がいたニュースも実際にあった。あの時はひどい親だなって私も思ったな。子供に犯罪させる親ってのはもちろん最低なんだけど、この映画をみて、どんな事情があったのかはわからないし、それが社会に適応できなかった故にそうすることに至ってしまうことがあることもあるんだ、と思った。
日本にはこの映画のような人たちが実際にいて、それを見ないふりしてなかったことにしているような国でオリンピックだのなんだのやってる場合かと思う。
つい最近も25歳の女性が漫画喫茶で子供を産んで、殺して遺体をロッカーに入れていた事件があったけど、その女性が逮捕されて終わりではないよね。相手である父親とか、その人の家族とか置かれていた状況がなにも見えてない状態で、その人だけを非難するなんて意味のないこと。
誰しも女性は子供を産んだら絶対に母性が溢れて、自分の人生を投げ打ってでも子供を育てられるなんてのは幻想でしかない。

自分では狭い世界にいるしかできないこどもたちがなによりも大切にされてほしいし、自分で人生を選択できる世の中であってほしい。

ラストシーンであの子の目に写ったものが希望だといいな。

2018.84
ちぴ郎

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