ピピン

万引き家族のピピンのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

是枝監督らしい家族と人間の心の闇をテーマにした作品。
力のある作品ではあるが、上手いなぁと唸ってしまう部分と、違和感を感じてしまう部分が有りチグハグな印象。

説明台詞を使わずに登場人物達の関係性や内面を浮き彫りにする演出は見事だし、それに応えた役者達も超一級だと思う。

しかし是枝作品を高く評価してきたファンとして敢えて言うがこの作品は駄目です。

その理由はキャラクターがストーリーを動かすのでは無く、ストーリーの上にキャラクターを置きに行ってるのだ。
全ては「取調べ」シーン以降を成立させる為の御膳立てに過ぎず設定が強引になっている。

まず、話は疑似家族が出来上がった状態から始まるが、そもそもこの疑似家族はどうやって出来上がったのだろう?

リリーさんとサクラはどうやって樹木希林の家に転がり込んだのか⁈
樹木希林が別れた旦那の家族である松岡茉優とどうやって一緒に暮らす程の関係性を作れたのかも腑に落ちない。

それに家族から疎外されていて、自分で自分を殴った事もある松岡が、自分を受け入れてくれる疑似家族に出会えたのに生活費すら払わないのも変だと思う。

リンを拾って来た後、事件としてニュースに取り上げられても相変わらず近所をウロウロしてるのは違和感を感じる。
直ぐに見つかるでしょ⁉︎

柄本明の「妹にはやらせるなよ」の一言からストーリーが動き出す。
この作品を理解したければ、祥太の視点だけ追えばよい。

大人達は自分の弱さを誤魔化す為に嘘をつき、そして社会は冷たい。
全てを社会のせいにして、死んだ人間のヘソクリで喜ぶ大人達に愛想を尽かし、守ってくれない社会にも疑問を抱き、最後は強くなるしか無いと悟る祥太の成長物語がこの話の核心だ。
しかしそのストーリーを成立させる為に用意した設定は強引だ。

祥太が警察に捕まるシーンでなぜ飛び降りる必要があったのだろう⁈
祥太はわざと捕まったのだ。飛び降りる必要はない。
これは最後のリリーさんとの会話を成立させる為に、祥太を捨てて大人達が逃げようとするストーリーを成立させたかっただけなのだ。

そもそも大人が三人もいるこの疑似家族が万引きをしなければやって行けない様には見えないし、結局万引きをさせた理由がリリーさんの「俺に教えれるのは万引きだけだった」というのは弱過ぎる。
もしタイトルが「年金家族」ならまだ納得できるが、メインタイトルが「万引き家族」で万引きに意味を持たせられないのはどうかと思う。

人間には矛盾した二面性、三面性があり、良心や情が有っても、相手を利用したり裏切ったりするものだ。
そういった物語では表現し難い部分に挑戦して来た是枝監督を評価していたのだが、この作品ではそこが破綻の元となっているのが残念だ。
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