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万引き家族のTSのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.4
【どこまでが「家族」なのか】74点
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監督:是枝裕和
製作国:日本
ジャンル:ドラマ・犯罪
収録時間:120分
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2018年劇場鑑賞54本目。
パルムドール受賞記念で先行上映していたので鑑賞。うーん。普通。賞を受賞したからといって必ずしも万人ウケするわけではない。特にカンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作品はややクセがあると個人的に思います。是枝監督の作品は自分の中では良作揃いなのですが、その中でも今作は平凡かなあと思ったり。いや、これが是枝監督の集大成の作品だと断言される方もいらっしゃると思いますが、僕は少なくともそうは思いませんでした。断っておきますが決して悪くない。でも期待値が上がりすぎていたため物足りない気持ちであったのです。

とある平屋に住み着く5人の人間。彼ら彼女らは低賃金の仕事に従事しながら、なんと万引きをして生計を何とか立てていたのだが。。

まず、今作が良くないという理由に「万引きで日本のイメージを損なう」を挙げるのはどうかなとは思います。何も日本という国を美化する必要は全くなく、日本のような国でもこういうことは起きているということを示す興味深い例でもあります。是枝監督はこれまで家族愛や母性父性に関する作品を多々出してきましたが、今作ではついに家族の定義を我々に丸投げをしてきた印象です。『そして父になる』でそのあたりの答えが出された気もしましたが、今回是枝監督は、万引きという犯罪を起こしながらでも、それに同調していた集団を家族とみなせるのかという難題を我々に提示してきました。

彼らは万引きをしでかしますが、たしかに幸せそうに暮らしています。血も繋がっていない五人が家族という理想の集団を求めて一箇所に集まり、そして一つ屋根の下で暮らします。側から見たらどう見ても「家族」であります。鑑賞者も最初は彼らを家族と思い込むでしょう。しかし、話が進むにつれて、この人たちは家族集団でも何でもない、と思われる方が多くなるのではと思われます。その基準がつまるところ「血」なのでしょう。結局、我々は家族という定義に「血」というキーワードを排除出来ないでいるのです。

その「血」というキーワードを排除した、いわゆるアウトローの家族が今作の「万引き家族」であるのです。最後まで見て我々は彼らが「家族」であると言い切れるのか。彼らの絶えない笑顔を見て「家族」ではないと断言できるのでしょうか。日本ではもしかしたらこういうアウトローの集団は珍しいのかもしれません。しかし、これがパルムドールを受賞したということは世界中の共感を得たということでもあるので、このような状況下に置かれた集団が世界中にいるのかもしれません。いや、地域によってはこれが普通なのかもしれません。そして、こんなことが日本でも起こっている衝撃も隠せないのでしょう。

なので冷静に考えたら凄い作品と思われます。しかし、僕は今作に多大な程の感動を要求していました。そうなると、考えさせられる話ではありますがそれ程泣ける話ではありません。やはり、苦しくも犯罪を犯し続けている集団を野放しにしておくのは、他者の利益や平穏を阻害する恐れがあるので決して許されるものではないでしょう。そこが少し引っかかり、総じて普通の作品と個人的には捉えました。それでもパルムドール受賞は素晴らしいことです。誠におめでとうございます。
TS

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