Bluegene

万引き家族のBluegeneのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画で描かれているのはみんな「捨てられた人たち」だ。

夫に捨てられたハツエは元夫の再婚後の家庭にたかっている。離婚していれば遺族年金を受け取ることはできないので、正式な離婚をしていなかったのかもしれない。あるいはボソリと「慰謝料」と言ったように、金を払っていたのは元夫の家族だったのかもしれない。

祥太はパチンコ屋の駐車場で、車上荒らしをしていたオサムに助けられた。親は祥太を車内に放置してパチンコに興じていたのだろう。

両親に虐待されていたユリは、寒い夜に家の外に放置されているところをオサムと祥太に助けられた。

アキはハツエの元夫の孫娘にあたる。元夫の息子はいい暮らしぶりだが、アキはその家に空虚さを感じ取ったのかもしれない。家出してハツエの家に住まわせてもらい、ソフトな風俗店でバイトしている。

オサムは妻のノブヨの前夫を殺した前科があった。前夫のノブヨへのDVが認められたことから重い罪には問われなかったが、定職につくことは難しく、工事現場で日雇い仕事をしている。

ノブヨはハツエの唯一の血縁である。かつてはスナックで働いていたが、前夫の死後ハツエの元に身を寄せ、オサムの出所を待った。ハツエの年金を除けば、クリーニング店で働く彼女の稼ぎが唯一の定収入である。

前情報では「祖母の年金収入が頼りで、あとは万引きで生計をたてる家族」のようなイメージだったが、このように彼らは働いていないわけではない。あともう少しあればな、という時に盗みを働いているのだ。「お店にあるものはまだ誰のものでもない」「お店が潰れない程度になら持ってきてもいい」そう自己正当化しながら。

全てが発覚してから、ノブヨは刑事に「捨ててあったものを拾っただけ」と呟く。だが拾ったものを寄せ集めて作った家族は最後にバラバラになる。何も持たない彼らが嘘を重ねて安らぎを求めたことを責められるだろうか?それは蜃気楼や白昼夢のようにはかないけれど、彼らの唯一の救いでもあったのだ。

保護されたユリは「家族」で海水浴に行ったことを絵に描く。虐待する親の元に帰された「ジュリ」が海に行くことはもうないだろう。ただ、私は彼女が生き延びられると思っている。今の彼女は「家族」の記憶を持っているから。
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