このレビューはネタバレを含みます
けどあれ犯罪だよね、の一言で片付けられないリアリズムがある。
犯罪を肯定するかのような展開に倫理観を揺さぶられるし、観る人のなかには戸惑う人も多いんじゃないかとおもった。
だけど本質はそこではない。
家族が一体何によって繋がっているのか、ということを作品の中の'家族'をベールをはがすように崩壊させていくことで見えてくる。
経済的な(お金)結びつき(祖母の年金)、血の結びつき(妹とその家族)、情の結びつき(子供への愛、夫婦の絆、妹とその客)、これらは最終的に全て崩壊する。残るのは社会の中に取り残された個人。
じゃぁ結局家族って何？
最後のシーン、空っぽの彼らの家。あれ？彼らをつなげていたのは場所だったの？
映画の終わりは少女がまたベランダで一人ぼっちで遊ぶシーン、始まりのシーンにもどる。
エピローグがプロローグになってしまうような、物語の繰り返しを予期するようなシーン。
しかしそうはさせまいとする眼差しがある
女の子の視線の先の小さな希望とともにエンドロールに入って行く。
映画のその先にある例えばあの女の子の未来とか男の子の未来、そしてこの映画のテーマ、家族の有り様、
社会はどうやって包摂していくの？っていう問題提起。
そして社会の常識や枠組み、決められたルールだけを追っていたら見失ってしまうものを少し立ち止まって考えてみる、そんな機会を与えてくれる映画。
今回パルムドールをとったことで300館に拡大され上映されることになったようですが、近年このような白黒つけない日本映画がこのように大々的に公開されることはとても稀。重要で貴重なことだとおもう。たくさんの人が観ればいいな。
※英題'Shoplifters'ジャンル映画に落とし込まれてしまいそうなカジュアルな響き。
