他人はもちろん、家族の絆が希薄になった現代だからこそ、この映画は刺さる。
絆って何ですかって問いかけは、現代社会にとって一番重いテーマであり、誰もが目を背けたい問題だからである。
昨今の虐待死事件を見ても明らかなように、現代では、血の繋がった家族でさえ、平気で絆を捨ててしまう。
ここに出てくる人々は、文字通り、捨てられた絆を盗んで、「家族」となった。そんな彼らが本当の家族以上に家族に見えるのは当然のことだ。
とは言え、所詮は、盗んだ絆であり、犯罪的な利害で成り立った関係。美しくないうえに脆く、ささいなことですぐに崩れていってしまう。
本当の家族以上に強い絆で結ばれた家族など、所詮、幻想でしかないのだ。その事実を突きつけられたとき、私は哀しさを通り越した空白感を感じた。