Jin

万引き家族のJinのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
“盗んだんじゃないです。拾ったんです。捨てた人がほかにいるんじゃないですか?”


それぞれの事情で集まり、年金とバイト、そして万引きで生計を立てながら、平屋に「家族」として暮らす男女5人が、虐待された女の子を拾い、やがて離れ離れになるまでの話。


お金や愛、孤独や性、それぞれの事情と求めるものがあって集まった仮の「家族」。その中で生まれる絆。
台詞の中にもあったけど、本当の家族じゃないから割り切れるし、自分で選んだ家族だからこそ強い絆が生まれるのかもしれない。
登場人物は皆それを認めようとはしないけど、そこには本当の家族以上の絆が生まれる。


そして「名前」にこめた想いの重みを取り上げた作品でもあった。
自分の過去や相手の過去へ想いを込めた、名付け名と名乗り名。
家族全員が2つの名を持ち、それぞれに想いが込められていて面白かった。

モラルを失わざるを得ない生活をする人々の中で生まれる繋がり。
一人一人の力は弱くて脆いが、家族ならば…っていうスイミーの話はちょっと説明しすぎだったかもしれないけど、響くものがあった。
この映画の人々のモラルのなさをハッキリと批判はできない。
日本の社会的弱者に焦点をあてた映画って今までなかなかなかったし、そこに日本の家族観を重ね、さらにここまで注目される映画にしたのは素晴らしい。


是枝監督は相変わらずセリフがすごいなぁ…
ほぼアドリブだからこそだろうけど、そして役者の力だろうけど、まるでドキュメンタリーのようなリアルさと、だからこそ感じる人間の温かみ。
そしてこの物語を一から作る力。

脇役にもふんだんに豪華俳優陣を揃えた力作という感じ。
全員演技が異常にすごいし、はまり役。
松岡茉優も安藤サクラも身体はったなぁ…
樹木希林の入れ歯を外した演技、特にミカン食べるシーンの不気味さ…

砂浜の他人行儀な”ありがとうございました”がずるい。
Jin

Jin