しんどいです。ほっこりする場面やコミカルな場面もあるけど物語を支配してるのは行き詰まり感。どう転んでも不穏な未来しかないけどせめて子供だけでも希望を見せて欲しいと。最近のニュースとリンクしてるのもあり胸が詰まる思いでした。
しんどいけどつまらない場面が１つもなくずっと見てられたのは演出、演技などすべての要素が高品質だからだと思います。特に撮影。俯瞰のショットはどれも良かったが花火を見るために家族が縦に並ぶ場面の美しさ。これが映画を観る歓びだと感じる。要所で挟まれるクローズアップもいい。明らかに昼の陽光を浴びた部屋に雨が降ってきて画面が一気に黒みを帯びるライティングも忘れられない。
リリーフランキーの人たらし感。この映画を社会的な問題に引き寄せて語ろうとしても「松岡茉優ヤバい」で片付けられるのが許されるであろう松岡茉優の素晴らしさ。わずか一場面で観客の気持ちを掻っ攫っていく池松壮亮。終盤の展開は役者の力を信じた演出。役者を画面の中心に置いて切り返しで撮る。そこでの安藤サクラが圧倒的。鳥肌が立ったのは樹木希林がビワ？を入れ歯のない口でクチャクチャ食べる場面。怖いですよ。
子ども２人の自然な演技も見事で祥太が徐々に気づきを覚えていく過程、りんの表情の変化。泣きますよね。
「そして父になる」や「海街」は血縁よりも絆だったがそれだけではどうにもならんこともあるってことを突き放して描いている。あえて描かなかった余白を埋めようと考えるけどじゃあどこをどうしたらどの時点からやり直せばよかったのか。意味が分からないという意見も納得できます。でもそれを考えるのもまた映画的でもあると思います。
是枝監督のベストとは言わないが集大成と言ってもいい。
万引き家族見てからデッドプール2見るのがオススメです。
