柏エシディシ

万引き家族の柏エシディシのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
鑑賞後とにかく思ったことは、この映画を自分の友人知人家族に観るように薦めよう、と。
たくさんの人に観て欲しい、という想い。
そして、貴方はどう思いましたか?と聞きたい、話したい、という想い。
カンヌの審査員たちも、ただ只そういう想いだったのだと思う。
パルムドールなんて大仰だけれど、本質はそこなんだと思う。

ラストカットに象徴的だけれど、本作は観る人によって受け取り方は変わると思う。でも、間違いなく、心や知性に大きく揺さぶりを掛けてくる。それこそ、人生や今までの価値観を変えてくる程の。2時間足らずでそれほどの体験が出来る事なんて、そうそうない。それだけでも本作は大きな力のある映画だし、映画好きとしてその事を大いに祝福したい。

本作での主人公達の描き方を映画を観ずに批判している筋の方にこそ、観て欲しい。貴方の批判するべき事は、この映画ではなくこの映画が照らし出している、今そこにある現実なんじゃないですかね?
無知と不寛容と戦うために、時に映画は在る。とも思う。

ネグレクト。行き場のない人達。「みんなで少しずつ貧しくなりましょうってやつ」。音しか聴こえない花火。売り払うはずだった釣竿。男同士の会話の親しみ。女性だけの「職場」の会話の距離感。細野晴臣の劇伴。4番さんの涙。「誰も知らない」のあの子と祥太。抱きしめられていたのはりんちゃんだったのか、信代さんだったのか。駄菓子屋の親父の言葉。「男はみんな、おっぱいが好き」。ふたりのさやか。うわべしか伝えられない報道。昨夜の余韻を引きずるバス停に残る雪。やっぱり夏はそうめん。叩かない?。幸せな思い出としての海岸。とーちゃんとおじさん。産後の安藤サクラさんの艶めかしさと母性の説得力。

まさに是枝監督の集大成で、作品的テーマ、撮影手法、役者陣の演出、全てが最高峰で到達点。
柏エシディシ

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