チーズマン

万引き家族のチーズマンのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.4
『誰も知らない』はもちろんだけど前作の『三度目の殺人』までの今までの是枝監督作品の要素が凝縮されたような、まさに集大成的な作品でカンヌのパルムドールを獲るとか出来過ぎたストーリーだなあ、いや凄いと思う。

だからという訳じゃないけど、どうせならこれを機に是枝監督作品のファン以外の沢山の人にも観て欲しいなあ。
きっと何かしら感じる映画だと思うから。

『万引き家族』、法の外の正しくない事をして繋がっている、疑似家族という正しくない形の家族。
その物語。
しかし、この作品はいわゆるちゃんとした形の家族とか、社会の正しさを否定してる訳ではないと思う。
そのうえで、もはや「正しさ」が幸福の実現への指針や道しるべじゃなく、正しくあること自体が“目的”になってしまった社会がこの家族を通してぼんやり浮かび上がってくる。
だから終盤に、とある人物達の口から発せられる単なる“目的化された正しさ”の数々は虚しく空を漂って全く何も響かない。

確かに正しいけど、それって誰得なの?

そういう視点を、観客はとても丁寧に分かりやすく得ることができる。


それぞれの役者の演技に関していちいち上げれないぐらい皆が素晴らしかったし、色々なシーンの演出も安定の是枝監督クオリティで、特にやっぱ今回も食事の演出はとても良かった。

あと細野晴臣の音楽も単なる間に合わせじゃなく、“音”の組み合わせが、この家族の物語への気遣いと表現に溢れていて素晴らしかった。


いつ観ても面白いんだろうけど、やっぱ今観るべき作品なのは間違いないと思う。
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