Yuya

万引き家族のYuyaのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.1
是枝監督のニュートラルな立場の決定版のような作品だったかな
とかく今回は テーマといい 演出の繊細さといい これまでの作品群で習得したり駆使した技法を 余す事なく盛り込んだ ある意味で集大成なのかも…
とか言って 次作であっさり記録更新もしそうだけどさ

思えば監督の目線は いつだって平等だったわけで
少数派や弱者にもスポットを当て そこに温もりを描く優しさの一方で
責めづらい部分での無責任さや ただ傍観してしまうという多数派の“悪”への 厳しい追求にも 決して手を緩めてはくれないんだなぁ
バスの窓越しの“おじさん”と“少年”のシーンで ハッとしたのち あぶら汗みたいなもんが止まらなかった…

自分もさ ”ツウ“とまではおこがましくても 映画好きって程度の自負による 同監督の作品群や同系の映画タイトルをチラつかせる癖でもって
“あぁ 『そして父になる』と繋げたかぁ”
とか 意識とかしちゃったりしてさ
そんで その後思ったのは そうやって映画を映画として分析して得意げになってるような自分って もう既に“家族”としての彼らを 遠いどっかの“誰か達”として すっかり傍観してしまっていて むしろ監督の否定するところの対象になってる…そんな罪悪感が責め立ててきて 無性にやるせなかった

完成後にカンヌ受賞があって 公開のタイミングで虐待された少女の悲痛なニュースが入ってくるような 華やかな映画と過酷な現実との見分けさえ難しい 今という世の中だからこそ この作品の意義は計り知れないとも思う

引きの画の中では まるで父子のように遊ぶ2人
それは 誰からも近くで見つめられないからこそ 成立してしまう“ウソ”
寄り集まって 無理をして ニセモノだと承知で マグロのフリをする小魚のような彼ら
大勢の人が見上げる花火も 軒下の彼らからは見えないし 彼らもまた大勢の人からは全く見えない存在なのだろう
実の親元に戻っていない少年だけが 前に進めているように思えるのが 悲し過ぎたなぁ
Yuya

Yuya