映画を見た後に温かい切なさが残るのが是枝監督作品の特徴。温かいと表現していいのかわからないが、人に優しくしようと思える作品なのだから決して的外れではないだろう。
人によっては怒りのような感情を抱くかもしれない。それは社会の矛盾に対してだったり、今作品の登場人物の誰かであったり、何もできない自分に対しての憤りからくる怒りかもしれない。
どんな感情を抱いたにせよ、今作品は人の感情を揺さぶる力があるというだけで素晴らしい作品なのだ。
僕がもっとも切なく感じたシーンは、登場人物達が海で遊ぶシーンとラストシーンだ。海で遊ぶシーンは天候が気持ち悪いくらいの曇天であり、登場人物達のこれからを暗示していた。ここから暗転していくだろうストーリーに憂いながらも、偽の家族が本物の絆を築いていく美しさに感動していた。
そしてゆりのラストシーンだ。またもアパートの廊下で1人遊んでいるゆり。信代に教えてもらった歌を口ずさみながら。
ふと思い出したように台の上にのり外の景色をじっとみつめる。幼いゆりの中にどれだけ明確にあの家族の記憶が刻印されるのかはわからない。ただ、これから厳しく残酷な環境で育っていくだろうゆりの目にはあの家族から教えてもらった優しさが写っていた。
絶対に今作品は観るべきだと思いますよ。
