kuzira

万引き家族のkuziraのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.9
最もそこに存在していて、掴み所のないもの
それでいて
心地よい当たり障りがある
全自分の魂を鷲掴みにされる家族だった

それは間違いなく家族で
捨てられて拾われた、正に万引き家族


もうね、最高に最高を重ねたモンスター達
こんな化け物級の魅力的な俳優陣が
この映画の中で生きている事に幸せを覚えたし
この映画の中で生きている事に僕は怯えた

お芝居って美意識なんだと僕は思ってて
その僕の美意識の中で
ここまで絶妙で巧妙な演技を僕は知ってしまった
あーこれはまさに。盗みたい、手に入れたい

日本の良いところ沢山詰め込まれていて
日本特有のジトッとした会話と空気感
カラッとした酸素の薄い人生の欠片も

全部そこにぶらさがっていて
全部そこに立ち止まっていた


人生の中の"最善"は誰にもわかる訳などなくて
これが最善であるのか、違うのか
そんなもの、一生人生に付き纏ってくる

ただ、最善であろうとする決断を
この家族はずっと信じていて受け止めていた

だからこそ、間違った気がした時は
自分の力で最善を取り戻すのです

あの子にとっての最善も
家族にとっての最善も
僕にとっての最善も

これはきっと限りある人生の中の最善
だからきっと限りある生活の中の愛しさが
あの空間にあの確かに家族だったあの家に
蔓延ってて、今もあなたの心に蔓延ってる

盗んだのは、絆
盗めなかったのは、血縁

終わらないものなんてきっとない
終わらないものは血縁だけ

終わっていくものと、変わっていくもの
それは似てないようで
限りなく一緒な気がした心細さでした


盗みたいよ僕は、この映画の全てを
盗みたいくらい、不幸せで幸せな映画
kuzira

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