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万引き家族のqudanのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5
描写がひたすら丁寧。
舞台美術や会話の猥雑さを出しつつ、見やすさ聞きやすさをバランスさせる職人芸。

これ以上説明したら野暮ったくなったり、説教臭くなったりするところを、観る側のリテラシーを信じて、あえて抑えているのも良い。

この映画は「貧しさから飢えをしのぐため万引きをする家族の話」と捉えてしまうと微妙に芯を外してしまうと思う。(映画の見方なんて人それぞれでいいんですけどね)

冒頭の万引きシーンのすぐ後に、お金を払って露店でコロッケを買うところからも、必ずしも貧困そのものを描きたいわけではないのが分かる。

万引きはあくまで「社会規範からはみ出した人」の行為としての象徴。
そのはみ出した人たち、はみ出さざるをえなかった人たちを描くことで、逆説的に「社会規範の内側に」無理して留まることの歪さも描いている。

子供にしつけと称した虐待をしたり、世間の体面だけを気にしたり、一度はみ出してしまった人に優しくない社会だったり。

パスカルのパンセという著書に、このような言葉がある。
「すべての人は幸福になることを求めている。そこに例外はない。どんな異なった方法でも、皆この目的に向かっている。」

まさに、この言葉のような作品だと思う。
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