つかれぐま

万引き家族のつかれぐまのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.0
18.6.14 大泉#1

裁かない視点

これほどまでに重苦しい題材にもかかわらず、徐々に家族の真相がわかる構成の面白さと、素晴らしい演技のアンサンブルでエンタメとして成立させる。これは相当に凄い。因果応報と言える結末にも納得。

結局はブラックだったこの家族を「裁く」視点は本作には皆無だ。監督の狙いなのだろう、そこは観客に委ねてはいる。

じゃあ「ありのまま」で観客の感情を全くリードしないのかと言えば、良くも悪くもそうでもない。リリーと祥太のじゃれあいなどは過剰なほど詩情豊かな場面だし、終盤の取り調べシーンはかなり警察に対して悪意的だ。

ここのバランスに少し座りの悪さを感じた。「裁かない」視点を掲げつつ、個々の場面では観客をリードしている。全体の「視点」と個別の「手法」の不一致?なのかな。そこも飲み込めということなのかもそれないが、私には消化しきれなかった。

<祥太(仮)>
救いのない話ではあるが、祥太の成長物語という筋が一本通っていることでわずかな光が見えてくる。スイミー、柄本明の駄菓子屋、おっぱい!といったエピソードを積み重ねて、最後には「妹」を守るという、本編唯一?の「正義」を実行した彼の胸中には悔いはなかったことだろう。

<安藤サクラ>
一人で罪を償っている彼女だけが、笑顔で終わるのが皮肉だ。彼女の取り調べ場面は、まず反発→自分と向き合い→全てを受け入れる、という感情の劇的変化が表現される素晴らしいシーンだった。

<リリー>
結局父になれない。その資格はなかったと言わざるを得ない。これは信代もそうだが、子供たちのためでなく、自分自身の(ささやかな満足の)ために親になろうとした。信代は最後にそこに気づき、祥太の出自を話し祥太の旅立ちの背中を押す。どこまでも残念な治はそこに気づかぬまま、逆に祥太を追いかけてしまうのがとても切なかった。

スクリーンの縦横がビスタサイズなのもよかった。持論だが、日本映画はシネスコ向きではないと思う(無理やりシネスコにしている作品もあるが、作り手の自己満足?に見えて痛い)。