秋日和

万引き家族の秋日和のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.5
名前を二つ持っている人たちが鏡の前で自問自答する。そんな映画がこの世に一体何本あるというのだろうか。バスの窓ガラスに映るリリー・フランキーに至るまで、なんて古典的なことをやってのけているのかと思ってしまった。別にそのこと自体に批判的ではなくって、寧ろ古典的な手法を丁寧に自作に落とし込むのが上手い監督なのだと捉えている。
例えば『そして父になる』の父子の並走が『パリ、テキサス』なら、この映画の松岡茉優と池松壮亮のやり取りだだって同作に近いものなのかもしれない(二人の関係性がヴェンタースのそれと違っているのだとしても)。もしも是枝さんが常になにが受け入れられるのかを研究して、これだと思うものを探し続けていた人ならば(映画監督なら誰だってそうなのかもしれないけども)、今回は遂にその研究が身を結んだ成果なのかしらと乱暴に言ってみる。
印象深かったのは、リリー・フランキーが「おれが子供に教えられることは万引きくらいだ」と刑事に言ったにもかかわらず、当の子供に対しては「カップ麺にコロッケを入れて食べるとうまいって教えたのは俺だよな」と自慢気に話したところ。まるで親父(自分)の癖が我が子に移ってしまったかのような口振りで話すあのシーンがあまりにも虚しくて、少し泣きそうになってしまった。