Hondaカット

万引き家族のHondaカットのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5
90点。すんなりひと言で感想が言えないのと同時に、この映画で描かれる問題もすんなりひと言では言えない。様々な現代日本の問題点を一つの家族に詰め込んでいるので、ファンタジーに近い。ただ、極端に弱い立場の人々の、か弱く声にも出ない想いに、【人の想いの本質】を感じ、あらゆる感情が巻き起こる作品。素晴らしかった。

登場人物が分かりやすく想いを吐露しないのは『海街diary』『三度目の殺人』と同じ。是枝監督は、この【想いを察する】という日本人ならではの思いやり文化を非常に大切にし、それがまさに「言葉でなく画で語る」映画的な技法に合うのだと確信してるのだと思う。そして、それがそのまま、誰しもが持つ【家族間の思いやり】として投影される。

カメラ位置、構図、照明の素晴らしさ。弱者の目線、その中にある希望と美しさ、を一発の絵で表している。例えば「音だけ花火」のシーン、俯瞰ショットの画作りの、なんと雄弁なことか。

ドキュメンタリー作家の是枝監督は綿密な取材のもと脚本を書いているので、こういうような「リアル」は必ず存在するし、その人たちがどうしてその現実から抜け出せないのか、は、映画を観るだけではピンとこない。「もっとこうすればいいんじゃないか?」と思う我々の「?」は自ら調べて自ら考えないといけない。問題は映画の外に広がっている。エンディングロール曲の不確かさがまさにそれを強調している。

ラストの構成・終わり方は映画ファンも賛否二分だろうなと思う。ただ、それでも、かすかな希望や、大事なことは何かは、わずかだけど映画内に描かれている。なので、僕は賛です。
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