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万引き家族のnagashingのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.5
女優陣や子役たちにくらべてだいぶ見劣りしてしまうリリー・フランキーのくどさ、ぎこちなさ、わざとらしさが悲しい。劇中の役どころをそのまま反映している。「ただいま」とつぶやく建設中のがらん堂、ふくらませたビニール袋のリフティング、ぶかっこうな雪だるま……「父」と呼ぶよう執拗にうながす彼が、できそこないのまがいものであることを突きつける数々の光景。バスの窓ガラスに映し出されるのは、自分の本名をあたえたはずの子どもではなく、反射した彼自身の姿。少年は振り払うように男の名前と鏡像を置き去りにしていく。名づけえぬ関係をありのままに受け入れようとしていた安藤サクラのしなやかさにたいして、近代的な家族像・男性像にどうしようもなく拘泥してしまう男のみじめさがキツい。いちばん親らしく自然に見えたのがセックスの事後をごまかすシーンであり、ここでEDが回復しているというのも安直すぎるが泣ける。突き放したラストと細野晴臣の浮遊感のある音楽があいまったエンドクレジットの余韻がすごい。
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