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万引き家族のスのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
重なる会話や生活音に感じる疑似家族。
しかし、社会では良しとされないワケで繋がった家族に明るい未来があるはずもなく、つかの間の幸せこそ感じても、その脆さ故に心から落ち着いて見ることができない。


劇中、安藤サクラが樹木希林に呟く言葉が頭をよぎる。

親は子供を選べない。子供に選ばれた。

それが成り立つには、当然だが、“親“がそれを受け入れなければならない。

だからこそ、子供が誰を親と思うのかということも深く刺さる。



以下ネタバレも

終盤、血縁のある親のことを話したり、そこに戻ったりする展開になるが、そもそもリリー・フランキーたちは「生きるためのグループ」だった。生きる上でたまたま家族のような年齢層が集まり、そんな形になり、上手くいっていた。お金を目的とした繋がり、偶然の繋がり。そんな繋がりの中でも、自覚しないままに芽生えてしまうものがある。

あのとき逃げ切れたら、とは想像してしまうが、多分それだと彼らの意識の中に“ただの生存グループ“にしかなれなかった…というやるせない気持ちが残り続けるだろう。そのやるせなさは、共に暮らした家族への情があるから故であるのは間違いないのに。
捕まり、現実を突き付けられ、そして、それを受け入れることでしか前を向けなかった。

安藤サクラの涙のシーン、リリー・フランキーがバスに向かって走るシーン。その瞬間に彼らは“親“になり、家族になったのだ。と同時に、松岡茉優が覗いたあの家は空っぽで、家族だったその時間は永遠に戻らない。


終わったことで、その存在が無にならなかった。生きている限り、何かが終わったら次がある。もう大人たちは過去に浸ることしかできないが、子供たちには未来がある。


ちなみに、安藤サクラが最高だったのはもちろんなんだが、城桧吏くんがカッコよくて、釣竿を盗んだ後に歩いてるシーンなんかは普通にイケメンだったな。
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