krh

万引き家族のkrhのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
-
何をどう感想にしたらよいのか図りかねるまま、鑑賞後一週間。
それは、鑑賞する側をジャッジメンタルにさせない内容であるから。考えるべきことはたくさんあるのに、どの立場にも立てず、ただ「こういう人たちがいる」という存在と出来事を見届けるだけの姿勢にならざるを得なかった。

福祉から取りこぼされる存在の人たち。いくら社会保障が改善されようと、こういう人たちは相対的にいなくなることはない。亜紀のように、家庭に経済的な不自由がなくとも、難しさを抱えて流れ着く子だってたくさんいる。本来の問題はもっともっとパーソナルなものだ。福祉に立つ側は非常に難しいところだと思う。

社会から距離を置きたい人たちがたどり着いた、一番小さな社会である「家族」という形。しかもそれが一時的なものだと分かっているし、彼らはどうしたって刹那的にしか生きられない。しかしどんな状況や理由があれど人とのつながりはあり、なおかつ、それは倫理観や人間性から離れて分化された先にある。社会的な動物としての人間の根源的な姿を見た気がした。

あのきったない家は、底辺層描写として死ぬほどリアルだなと思う。彼らはね、掃除を一切しないんですよ…汚いのはわかるんだけど、自分で汚してるから平気で過ごせてしまう。どんなものでも最低限役目さえ果たせばよい。自分の幼少期の友達には、家庭環境に問題があって似たような生活をしている子が少なからずいたし、自分もお里が知れる側の人間なので、よく知ってるな~よく作ったな~とひどく感心した。
服飾や食の描写も相変わらずとんでもなく高度だし、今回はまた情報量が多い気がする。

インタビューなんかを見ていると、印象的な場面はことごとくアドリブだったということに驚く。俳優陣の尋常ならざる力量と、それを引き出し、偶発的なものに必然性をもたせてしまう監督の手腕には、改めて舌を巻くしかない。集大成と言われる所以がよくわかる。こどもたちもとてもよかった…あと、「妹には"これ"、させんなよ」の一言のための柄本明。たまらんでした。
krh

krh