ヤマギワ

万引き家族のヤマギワのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
カンヌでパルムドール賞を見事受賞、政治家や某クリニック院長から的外れな非難を受けることで、良くも悪くも注目を集め、今年大ヒットしている本作。

是枝監督の十八番の日本における家族とは何ぞや?という問いかけに加え「貧困、虐待、年金不正受給」等の社会問題を扱ったものになっていて、是枝作品の集大成的な仕上がりになっている。

乱暴な要約すると「血の繋がりが家族たらしめるものではない」ということを是枝監督は、フィルモグラフィー上で撮ることが多いが、本作は「貧困、犯罪」を取り入れた上で、「親離れ・子離れ」まで描こうとしていると感じた。

中盤の終わりまでは、貧しいながらも仲睦まじい家族の日常が語られる。
拾いきれないほど家族の絆を感じる良いシーンが多いんですが、特に、「信代」と「みゆ」の風呂場で、お互いの傷を見せ合うやり取りは「血の繋がりはない親子」を感じさせ、印象に残った。

しかし観客は常にその〝終わり〟を予感させられる。
たとえ血の繋がりを持たずとも、絆で結ばれている家族でも、「犯罪」に手を染めている彼らの関係は、永く続かないと知っているからだ。

そのことに事実上の主人公である祥太は「ゆり」という外からの存在を経て、自分たちの行動が間違っていることに気づく。そして「ゆり」という家族の為に、自分の手で家族に終止符を打つ。

そして「ゆり」や「信代」もまた外の世界を知ることで、「親離れ・子離れ」に至る。
「ゆり」は、本当の家族を知ってしまったから、本当の母親が自分を愛していないことに気づく。
「信代」は、正しさを強要するような刑事の発言に、もう家族を続けらないことを悟り、祥太に車のナンバーを伝える。

このような「親離れ・子離れ」になってしまったのは、お前たちが犯罪を犯したからだろう、と断じるのは簡単です。
ただそれでは、「信代」を尋問した刑事と同じで、こちらの常識を押し付けているに過ぎないと感じた。

日本にも、間違いなく低階層・貧困といった問題があるにも関わらず、多数の中流に位置する人たちは、自分も含め、視界から除外し過ぎているように思う。
目に映させなかっただけで、彼らのような住居で生活する人は少なくないはず。
こういった視点を映画という一種の娯楽を通して、与える是枝監督の力量には本当に
頭が上がらない。

余談ですが、映画鑑賞後、一緒に観た友人のボソッと呟いた第一声が「…松岡茉優のオッパイ、でけえ」で驚いた。この映画を観て、よくこれだけ〝低い〟感想を叩き出せるものだと。ただその感想に「それな!」と食い気味に返す私もまた〝低い〟のでしょう。
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