れんれん

万引き家族のれんれんのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

是枝監督の第一作(だったと思う)である「誰も知らない」へのアンサーシネマのようにも受け取れる。監督がこれまでずっとテーマにしてきた「家族」について、現時点での答えを形にしたのでは、と私は受け止めた。

樹木希林の安定感はいつも通り。浜辺で、自分の足を見てシミを気にして砂を掛けるシーン、安藤サクラにまじまじときれいだと言うシーン、すごかった。それはそれとして、今回は安藤サクラに圧倒された。子役の素晴らしさは、前評判通り。

権力(メディアも含む)が口にする世の良識の、いかに当てにならないものか。いかに無責任なものか。もしくは、権力が良識を口にした途端、すべてが絵空事になるというか、是枝監督は、その構図も必ず描き込んできたが、今作ではそれが、観客の心に火をつけるくらい、うまく描けていると思う。家庭こそ、他人の想像力が入り込めない、思いもよらないことが起きる密室であり、他人様に対して、そのあり方を論評することのナンセンスさ、暴力性が、すごく伝わってきた。これから、ますます、私はニュースを懐疑的に見るだろう。

ラスト、少女は万引き家族に教わった数え歌を歌いながら、アパートの外を見る。血の繋がっていないだれかとの、新しい家族の再生を夢見て。疑似家族の兄は、すでに小学校を終えるくらいのため、自力で運命を変えた。本当の家族も万引き家族も、彼にとっては違っていたからだ。きっと少女も、早晩、自らその機会を得ようと立ち上がるのだろう。

山本直樹は、80年代、「ありがとう」で家族を解散させ、血の繋がりからの解放を示した。是枝監督は、家族を壊した後、いかようにでも形をつくれることを、しなやかに証明してくれている。
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