マクマーフィ

万引き家族のマクマーフィのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.8
是枝監督のリアリズムの演出、近藤龍人カメマンの湿度の高いアジア的なルックの中、役者陣か素晴らしい演技を披露する。
チャンイーモウの幸せ三部作、文革三部作にも共通する貧しき者たちの哀歌。中国の観客の琴線に触れることは想像に難くなく、中国本土での大ヒットも頷ける。
疑似家族を見つめる日常のスケッチの中、全員でカップラーメンを啜る夕食や隅田川の花火で縁側に顔を出すシーンなどが白眉。
ただ全体的に散漫な印象。それが是枝作品の特徴と言えばそれまでだが、いくつかのシーンで作為性や違和感を感じた。
その原因は、年金不正受給やネグレクト、風俗店などの社会派エピソードの盛り込み過ぎ。それらは作品のリアリズムや物語性にブレーキをかけ、自家中毒を生じさせている。ファンタジーとしての作品論もわかるが、それは曖昧さを良しとする逃げのような気がする。