群青

万引き家族の群青のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.8
2018年劇場鑑賞23作目


観るものの価値観を揺さぶる是枝監督は自身のこれまでのフィルモグラフィーの集大成を描くことによって、より繋がりとは何かということを明確に突きつけてきた。

それは当人たちが納得していればそれは血筋や互いの背景などは関係なく、良好で強固な繋がりを持てる、ということだ。

今まで監督が描いたことなんだけど、それが一番映画的なエンタメに落とし込んでいる作品だと思った。

冒頭のリリーフランキーとその子どもの華麗な万引きシーンや、雪の降る街の片隅や、河川敷の親子の距離感など、あ、これは画面作りや演出が作り込まれている、という恣意的なもの感じた。
今までの監督の作品ならよりドキュメンタリーチックで、より俯瞰的な視点が多かったけど今回は明らかにカメラが回っているというところが見て取れた。
そういう意味では普通の人たちが普通にみたいと思える映画にはなっている

個人的にはその方向に振りすぎて若干ウェットになり過ぎているかな?と感じた。もう少しさらっとしててもいい。むしろそのさらってした清涼感が自分が監督作品の好きな理由だったかもしれない。
サラッとしているから突き刺さる、というか。


でもそれでも作品的には面白くないわけがなく、役者のアドリブや雰囲気に任せた演技が奇跡的なシーンを生み出していることも間違いない。

パルム・ドール審査員長のケイト・ブランシェットが後世で似たような泣き方をした女優がいたらそれはあなたの真似をしたといっていい、とまで言わしめた安藤サクラの名演技は本番でいきなりフリップにより質問を突きつけられる、というところや、渦中の女の子がセミのサナギを見つけるシーンは実は女の子が偶然見つけた、とか、マジかよと思う笑


最後に、このタイトルでなんだかんだ批判があったけど、パンフレットにあったインタビューで万引きをしている小さな男の子を演じた子の部分で、万引きは犯罪です、絶対にやめましょう、と書いてあって、グチグチ言っている人たちよりはるかに幼い子の方がちゃんと分かってるな、と笑ってしまった。

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