ここまで、ダイレクトに万引き家族とタイトルで内容を一言で物語っているのでストーリーに深くは触れないが、
その分かりやすいタイトルと裏腹に、何層にも深みに入っていくような人間の複雑さ、哀しさ、愛おしさに触れていく作品だ。
役者陣の演技がいちいち素晴らしいのだけど、今この現実に、社会に、生きている人間の生々しさが喉元まで迫ってくるのがこの作品の魅力だと思う。
観終わって、リリーさんも樹木希林さんの最早演じていることを感じさせない自然な存在感や松岡茉優の可愛げと妖しさ同居する色気(無垢なようで無垢でないリアル)にも魅せられたけど、
それでも脳裏に焼き付いているのは、安藤サクラの生々しい女の業を肉体で表現しつつも、そこに宿る一言で表せないような表情。
全てを超越したかのように滲む笑みと虚無の瞳だった。
ほんと凄い女優だと思う。