ラウぺ

万引き家族のラウぺのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.2
覚悟はしていたものの、冒頭のスーパーでの万引きシーンに背中が粟立つような不快感に襲われ、ちょっとばかり観に来たのを後悔。

人のものを盗るのになんの躊躇もない登場人物たちは小汚い一軒家に住み、どうでもいいような会話をし、お行儀の悪い醜い食い方をする。まるで野盗のアジトといったところ。
どうみても不愉快極まりない描写が続くうち、それぞれの抱える秘密とそこに表れる心のうちが明らかになるにつれ、次第に物語に引き込まれました。
そんな生活を続けながら一家を結び付けているものはなんなのか?
即物的な生活の中でもどことなく楽しげで、ある意味では楽観的ともいえる生活、普通の社会からはじき出された者が感じる連帯意識といった表層的なものを超えた奥底を垣間見せることで、家族のあるべき姿とは何かといった根源的問題を浮き彫りしていくのです。

虐待を受けていた女の子を受け入れ、「家族」が増えてから徐々に深まる親密さ、それから物語が動き出してからの展開・・・家族のありよう、親と子の関係、信頼や愛情、社会格差や精神の貧困といったさまざまな問題を重層的に描き出して、最後に映画館から放り出される、そんなインパクトのある映画です。
冒頭のダウナーな気分からのこの落差、物語が終わってからも反芻し続けることを求められる脚本の巧みさ、なるほど、これは得難い映画体験といえる一作だと思いました。
ラウぺ

ラウぺ