ウサミ

万引き家族のウサミのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.9
繋がりを繋がり足らしめるものとは何か…? 映画芸術を通じてみる是枝裕和の視界


アカデミー外国語映画賞ノミネート記念凱旋公演?とかいうので映画館で観ました。
うーん、観て良かった。

正しいとはなんだ?つながりとはなんだ?
とにかく、考えさせてくれる映画。ひたすらにのめり込むことができました。

まぁ演者さんたちがすごい!!もう演技というより憑依に近いですよね。
安藤サクラとかわざわざいうまでもないレベル。どうしてあんな表情ができるのか?どうしてあんな風にセリフが言えるのか?実際に彼らがああいった風な人生を歩んできたんじゃなかろうか。演じているというより乗り移っているというのが適当なレベル。


「万引き家族」とかいうタイトルって、観終わってからあぁ、なるほど良いタイトルだなぁ的な"後から効いてくる系"のタイトルっぽくないですか。まさかいきなりマジで万引きするシーンから始まるとは。


明らかに普通ではない人たちの集まり、彼らの素性はハッキリとは明かされない。
にも関わらず、彼らの間に流れる空気は温かく、そして彼らそれぞれにそれぞれの魅力を感じさせてしまう。映画全体の空気感、質感の表現が本当に素晴らしく印象深かった。
リンを抱き、お風呂に入れる安藤サクラ。彼女の肌は、たしかに「母親」だった。
自分が本当にいるかのような錯覚。下等な暮らしに漂う妙な居心地の良さ。
そこに描かれているのは、たしかに「家族」だった。


万引き家族、彼らが抱える問題は、日本の闇、社会が目を背けようとしてしまう問題に満ち溢れていて、映画が進むにつれどんどんのめり込んでしまう。

そして、映画は「繋がり」を考えさせるところから、自我の目覚め、正しさ、を問うフェーズへと進んで行きます。


妹にはさせんなよ


拾ったんです 盗んだんじゃありません
誰かが捨ててたから、拾ったんです


血の繋がりってなんだ?
家族の定義は?
愛するってどういうこと?
育てるってなんだ?
人と人を繋げるものとは何なのか?
繋がりを繋がり足らしめるものとは?
彼らは正しいのか?
彼らを裁く我々は間違っているのか?
答えは全く分からないし、映画全体で特に見出されるわけでもない。

ただ、とにかく考えるのが楽しくて、そして映画を観たあとに、
「楽しかった。良い映画だった」
っていう感想が真っ先に出たんですよね。

「盗んだのは、絆でした」とかいうダセェキャッチコピーが表すような感動映画でもなく、社会に対する批判をしたいのでもなく、映画という芸術世界を通して、是枝監督は、僕はこういう事を考えているのだ、と絶妙なニュアンスを伝えているような気がした。

全てを理解しきれない、だからもう一度見たい、もう一度あの感覚を味わいたい。
色んな人のレビューを読んで、また新たな発見や気づきをしたい。
日本映画の素晴らしさ実感することのできた名作だと思います。