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万引き家族のcigaretteのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.8
映画館で観るべきかなぁーと思いつつ、なかなか足が向かなかった作品。
だって、是枝監督 作品は毎度、容赦なくメンタルをえぐるから、映画館だと、かなり覚悟がいるのです。
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タイトルから察する通り、万引がテーマで、冒頭から、ずっと胸がヒリついた状態なのだけど、さらに背景として低所得者、生活保護、私生子、ネグレスト、DV、虐待などなど、キツイテーマも容赦なく織り込んであります。

しかし、直接的なバイオレンスシーンは一切でてきません。多分監督はそういう過激なシーンに頼って印象付けるのが嫌いなんでしょうね、軽やかに物語を展開していく手腕は、流石としか言いようがないし、一方で登場人物たちの浅はかで不器用な生き方と、精一杯の愛は、痛いほど伝わってきて、愛おしくなってきます。

いかにもドラマ!って感じの、ご都合や、嘘くさい展開がないのが、最も信頼できる部分ですね。

それから、想像を掻き立てる演出も最高でしたね。
起承転結の「転」になる、*タマネギが転がるシーン、間接的な事故描写として、よくある手法ではあるけど、そのタイミングやタマネギの転がる速度、散らばり具合で、事の重大さを表現してしまう見事な演出でした。(*タマネギじゃなくて正しくはミカンらしいです。立派すぎて果物に見えなかったw)

台本があるように思えない自然なセリフ、リリーフランキーも、さくらも、樹木希林も、一般人よりも一般人ぽい。

リアルなんだけど、変に生々しくないのも、感心するところで、子供たちは利発な顔立ちだし、ボロでも洗濯された服を着ている。ビンボー一家の室内も、散らかっていても不衛生さは感じない。

初期作品「誰も知らない」の時は同じビンボー生活でも、描写に生々しさがあって、名作ではあるけど、何度も見たいとは思えない、辛い作品でした。

大衆を意識した映画づくりを是枝監督がしだしたら、案の定、日本アカデミー賞を総なめするほどの、実力が明るみになりました。

とりあえず、心の準備をするために、今回は 途中に3回程、休憩を挟みながら、エンドテロップまで視聴しましたよ。
映画館で一気に観たら放心して立ち直れなかったかも。

監督、脚本、原案、全て #是枝裕和 氏によるもの。
才能の塊ですね、日本映画の宝です。
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