Stroszek

万引き家族のStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

万引き家族(2018年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

英題"Shoplifters"。

過去の来歴からセーフティー・ネットから漏れてしまい、犯罪に手を染めなければ生計を立てられない人たちが寄り集まって家族を形成する。

なんの根拠もない印象論だが、日本のドラマでよく出てくる平均的家族の住まいは初枝が毎月3万円をせびりに行く元夫の息子家族の、清潔な二階建て一軒家だろう。彼らの家には床に物が置かれていなかったが、初枝の家には所狭しといろいろな物が散乱している。貧乏人ほど家に物が多い、を実感させるような描写だ。

日本でも、治(日雇い労働者)と信代(クリーニング店勤務)くらいの働きをしていれば十分に家族が暮らしていけた時代があったのではないか。しかしいまは明らかに不況で、「ワークシェアリング」の名目で仕事は減らされ、怪我をしても労災はおりない。「みんなで貧しくなりましょうってかあ」と治はおどけて言うが、これだけ現代日本の状況を反映している映画はほかにない。

大きなテーマとして児童虐待問題がある。「りん」と名付けられた子、じゅりはこれからどうなるのか気になる。

しかし、彼女を保護した治らが理想の家族を形成していた訳ではない。祥太の髪は伸びっぱなしで、服も子供用ではなく明らかに治のお下がりだ。ネグレクトまでは行かないが、適切なケアを受けていない。「妹」となったりんが万引きを始めたとき祥太は「この犯罪家族やばい」と思い、わざと捕まった。

最後、祥太が乗ったバスを追いかける治。振り返る祥太。団地で親から追い出され、廊下で遊ぶじゅり。彼女が何かを見つめる場面で終わる。施設を飛び出した祥太を連れた治が、彼女を迎えにきたのではないか、と希望を持たせる終わり方だ。しかしおそらくそんなことはないのだろう。問題を残したままのオープンエンディングである。

「捨てられた者を拾っただけ」という信代の言葉が重い。初枝の年金だが、離婚しており遺族年金は入らないはずなのでおそらく月額7万円ももらっているとは思えない。慰謝料を切り崩していたのだろう。序盤で言及されていた、「博多の息子家族」はほんとうにいたのかどうかも分からない。

「血縁よりも選び取った絆だから強い」というメッセージは、監督の過去作の『そして父になる』と共通していると思う。
Stroszek

Stroszek