ベルサイユ製麺

万引き家族のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.8
手が届かない。関与出来ない。

まるで自分の残像に縛り付けられたみたいに身体が麻痺して、それに抗おうとする時の痛みだけがこちら側の現実。


昼間の歌舞伎町を歩く時、渋谷のタワレコ脇の高架下を通り抜ける時、そこにはいつも、自分が敢えて認識しないようにしている人たちがいる。眼差しを向けないように。


少年A、少女B、元容疑者甲、失踪者番号×××、 、 、
狭い暗闇から、路地裏から、居場所を無くした彼らの眼差しは落とし所を探し彷徨う。
ああ、…どうか、彼らが心から落ち着ける場所を見つけられるますように。
どうか、彼らとまっすぐ向かい合ってくれる誰かが現れますように。
“自分以外の”何処かの誰かが。

自分以外の…と考える人達の群れが、彼らを生んだ。その事に気がつくのは、彼らの側に立たされた時か、或いはとうとうずっと気がつかないでいる事に成功するのかも。



🍊 🍊 🍊 🍊 ➰🍊

鑑賞中、何度も何度も、落涙してしまった。
逃げ出す背中の切なさに
少女が考えることを始める瞬間に
夕立ちに蘇ってしまう性の欲動の無様な美しさに
時間の流れを砂に隠してしまうしかない無力さに。


それから今、思い返し、ふと気付き、梯子から暗闇に転げ落ちたような心地で、更に深いところから涙が溢れる。
自分、いつから彼らみたいに笑うことが出来てないのだろう
なんで彼らの事を可哀想みたいに思ってしまったんだろう
家族と距離を置き、自分で選んだ人からも結局見捨てられる筋金入りの孤独者の自分にとって、かれらの「絆w?」は眩しすぎた。ラストショットの横顔は見覚えがありすぎた。表情を変えてみせる、相手も居ない。


無限の様な誰そ彼のなか、ひたすらに歩き続ける。
景色はぼよぼよに歪んで、此処が何処だか分からない。鼻の奥がきゅんと痛み、ぼくを迎えるゆうげの匂いも嗅ぎ分けられない。
涙がパリパリに乾く頃、だんだんと思い出す。自分は何処から来たわけでも、何処かに帰る場所があるわけでもない。
生まれついての迷子。いつか砂に隠される。
誰にも手出しされないまま。誰とも関与出来ないまま。