嘘か、絆か。
その2つをかけた天秤の揺らぎは、
犯罪を犯しているという罪悪感さえも呑み込んでしまう、
かわいそう、だなんて言葉を持ち出すことさえも固く禁じられる。
がんばれ、強く生きろ、またやり直せるさ、仕方がない、やむを得ない、みたいな、
励ましたり擁護したりする言葉や感情がくだらなくてナンセンスで時代遅れですよ、
そんなヌルい所であなたは生きて幸せですね、笑。的な世界が心をえぐる。
是枝作品の中で一番好きだとは思わないが、
好きか嫌いかではなく、
ただただ、「色々すげーな」っていう、
「誰も知らない」を観たときと同じ感じ。
気になる点が唯一あるとすれば、キャストが濃すぎかと感じた点。
あくまで個人的にではあるが、
よく知ってる顔が並ぶと安心感が出て、
辛辣な描写がマイルドになってしまう。
とはいえ。
実力派たちの演技は瞬きも惜しいほど見入ったし、
全員が全員主役のように思えるところがやっぱりすげー。
樹木希林と安藤サクラ、恐怖すら感じる。
話し方とか表情とか間とか仕草とか、ワンカットワンカットが美しい絵画のようだった。
子役の二人に関してはもうコメントも出来ない程の、なんだろう、破壊力?とでも表現しておこうかしら。
脆さと危うさで常に浮遊しているような得体の知れない妖精のような、
それなのにどこかこの作品の軸とすら感じられる二人。
なんとも言えない。
そして後半に出てくる池脇ちーちゃんと高良健吾の目覚まし力。
こっちが正しい世界なんだよと知らしめる。
そうそう、犯罪はいけないことだった、
と観る者に思い出させる。
でもそこから始まる現実の正義の時間はあまりにも悲しすぎて、
本当の幸福がなんなのか、正しさとはなんなのか、結局わからないということも同時に思い知らされてしまう。
その残酷さたるや。
監督はドがつくサディストなのか。
この先、それぞれが現実的に正義の道を歩み始めたとしても、
そして互いのことや出来事を忘れていったとしても、
この嘘と絆と同居した期間のことは血肉になって残るのだろう。
しこりのように身体の真ん中にあって、
そしてそれはいい意味でも悪い意味でもそれぞれを悩ませたり温めたりするのだ。
しかしあのラストカット、
ああゆうのを、トドメ、って言うんだなー。