GodSpeed楓

劇場版 幼女戦記のGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

劇場版 幼女戦記(2019年製作の映画)
4.2
2017年にTVアニメ放映もされた人気小説の劇場版。
タイトルに"幼女"という言葉が入っていることで、相当数の視聴者が減っているであろう、正直に申し上げて"非常に損をしている"と思われる作品である。何故ならば、中身は"ごった煮"と言わんばかりに異世界転生、魔法、戦争、政治などなど、ロマン溢れる要素がギュウギュウに詰め込まれていて、様々な視点から楽しめる作品となっているからだ。

僕は"異世界転生"に親族を皆殺しにされた過去があるので、このワードが入っていると基本的に憎しみを持って接するようになっている身の上である。(大嘘)
※本当は主人公にだけ有効なご都合主義が働き続けるのが鼻につくのが気に食わない事が多く、「ファニー・ゲームとか観て勉強してくれねぇかな」という木多康明みたいな歪んだ思想を持っているからだ。異世界転生作品の筆頭である「聖戦士ダンバイン」も合わせて観よう。

多くの異世界転生作品では、死をもって異世界に転生され、"前世は大変だったので、サービスサービスぅ!"みたいな精神で過剰スペックを与えられている事が多い。本シリーズもその例に漏れず、主人公であるターニャも現世の記憶をもって転生しており、この世界でも貴重な"優れた魔力"を持っている事から軍隊で出世街道を邁進するので、抜群にご都合主義が働いていると言える。

しかし、他作品との差別化として言えるのは、「主人公本人の思惑が外れ続ける」事である。軍隊のキャリア組として安全な後方勤務に努めたいという要望は延々と達成されず、何をしても、何を進言しても抜群に軍隊に有効な効果を発揮するが、その結果、最前線に送り込まれ続けるという非業の運命を遂げるのだ。こうして本シリーズの代名詞となる「どうしてこうなった」という名言を生み出し続ける事となる。

当劇場版はこれ単体の物語ではなく、アニメ化された内容の続きからとなる事には注意して頂きたい(原作4巻の内容に準拠)。これだけ観て「説明が足りない!★1つです!!」などと言うのは全くのお門違いであり、そういった方へ向けた作品ではない事は留意して然るべきである(アニメ映画にはありがちだけどね)。
※本作は違うが、"説明不足そのものが芸風"みたいな映画だってある事をご認識頂きたい。「プラネット・テラー」のエル・レイの存在なんて、その最たるものである。

開戦、首都襲撃、大規模侵攻からの防衛、遂に追い込まれる第二〇三航空魔導大隊、そして寵愛を受けし強敵の出現。常に盛り上がり続ける展開の面白さにはぐうの音も出ないほどで、あっという間に最終戦まで引っ張ってくれる。特に魔導大隊の脇役男たちがバッチリ活躍してくれる姿には感動すら覚えた。よく考えたら、彼らは凶悪な訓練を乗り越えたバリバリの修羅達なので、これぐらい出来て当然なのかもしれない。

総括すれば、見事な劇場版として作り上げられており、最初から最後まで延々と楽しめる名作である。本シリーズの代名詞である「どうしてこうなった」という台詞は、視聴者は言わずに済むだろう。
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