dm10forever

ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談のdm10foreverのレビュー・感想・評価

4.0
【『デジャヴ』か『ジャメヴ』か】

最初に結論から言うと「好き」です。
最近のホラーにちょっと物足りなさを感じていたところだったので、やっと正統派のホラーが来たなという感じで。
映像的にもグロは一切使わず、基本は「音」と「シチュエーション」で恐怖を煽るという古典的な手法であったにも係らず逆に新鮮な感じがするくらいでした。

個人的に「お?」と感心した点。
映像や怖がらせる手法はいわゆる古典的でありながら、同時に伏線を少しずつ散りばめて最後にギュッと回収するサスペンス的な要素が最後まで一貫されていたこと。

物語の舞台はイギリス。次々と霊現象のウソを暴いてきた「オカルト否定派」のフィリップ・グッドマン教授のもとに一通の手紙が届く。それは長らく行方不明となっていたはずのキャメロン博士からのものだった。自身と同じくオカルト否定論者のキャメロン博士を最も敬愛していたグッドマンは驚きと喜びを隠せずに博士の元を訪ねる。
しかし、キャメロンはグッドマンの功績を褒めるどころか「クソみたいなもんだ!」と一蹴する。気分を害して帰ろうとするグッドマンに続けるキャメロン博士。

「君は目に見えるものしか信じていない。でも真実はそうじゃない」

そして一冊のファイルを手渡す。
それはオカルト否定派のキャメロン博士をもってしても「どうしてもトリックが見破れない3つのケース」。
「是非、このケースの謎を解いて私を否定してくれ!」
つまりキャメロン博士ですら否定できない難解なケースを任されることになったグッドマン教授。そして今までの経験や理論では決して理解できない事態に巻き込まれていく・・・。

グッドマンが渡されたファイルには「廃院となった精神病院の夜間警備員」「両親との関係に悩む若者」そして「妻の出産を控え一人で豪邸に暮らす成功者」たちが体験した「現象」が残されていた。

一つ一つのケースはグッドマンにすればどれも初見のケース。勿論被験者たちも始めて逢う人ばかり・・・なんですが、映画を観ていると2つ目のケースあたりから「・・・・?」と気になる符号を見つける。それは本当に些細なこと。部屋の隅に置いてあるものだったり、壁に掛けられた写真だったり・・・。
事前情報では「英国発のホラー」とだけインプットしていましたが、「はは~ん、伏線回収系ね」と鑑賞中に軌道修正。
ただね、その要素を加えたことで鑑賞中のスピード感が一気に増してしまって、それが公式HPに書かれた「恐怖のジェットコースタームービー」という意味なのかと変に納得。
グロはないけどそれなりに恐怖シーンは盛り込まれていて、しかもその見せ方が上手い。

『結局心霊ってね、読んで字の如く「心の中の霊」なんだよ。心にある恐怖が思考や五感を支配して、あたかもそこに居るような錯覚を生み出す現象なんだよ』

自称「霊感がある」という知り合いから聞かされたお説法。
確かに霊的な現象なんて意味のわかるものや場面ばかりとは限らない。こちらには関係のないタイミングや場所で唐突に現れたりする。だから意味不明でよけいに怖い。
でもその恐怖シーンの中にも「ポツリ・・・ポツリ」と伏線が見える。
これ、本当に上手く作ってるなと思った。
あと、気になったのはこの作品には不思議と女性がほぼ出てこない。勿論全くでないわけではないが画面に映る女性はTV番組の出演者かラジオの出演者(声のみ)か幽霊くらい。その他登場人物に縁のある人物は映像よりも「存在」として語られるシーンのほうが多かった。
というか登場人物が極端に限られているんだけど、それも最後の最後で「なるほどね」というパターンの奴です。

ラスト・・・というかオチは言わないほうが良いですね。というか観た上で「実際はどうなの?」といい意味で観客に解釈が委ねられている部分も残しつつって感じなので。
悪くないです。

「この手の映画って、なんか観たことあるんだけど・・・でも何だったかが思い出せない・・」

それはデジャヴなのかジャメヴなのか・・・




サイモン・リフキンド役のアレックス・ロウザー。
メチャ顔芸役者です。彼のパートは結構怖い「都市伝説系」のお話しなのですが、なんせ彼の表情が豊かというかお茶目というか・・・。
一種の顔芸の域に達しています。それだけでも一見の価値があるくらい最高の出来に仕上がっていますよ。
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