まつこ

彼が愛したケーキ職人のまつこのレビュー・感想・評価

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
4.2
愛したひとの面影をなぞる物語。

ベルリンとイスラエル。
ホロコーストとナクバ。
愛と喪失。
宗教と性。
壁があるようで、違うようで、同じ。

夫を亡くした女と恋人を亡くした男。交わらない二人が悲嘆の中で見つける灯り。ラストの彼女の表情と空にやられた。私ならあんな顔できるかな…浮気相手っていう考えがもうないのかな。「ああ、そうだったんだ。言えなかったんだね…苦しかったんだね…」って泣けるのかな。残り香を慈しむような寄り添い方が似ていて間違いなく二人は彼の愛した人で、二人もまた彼を愛していたんだなぁと思った。

生地をこねる画がこんなにも美しいだなんて。ああ、切ない!作品としても好きだけどイスラエルの生活様式が垣間見えるのも面白かった。非ユダヤ人がオーブンで焼いたものは売れなかったり、肉と乳製品でお皿が分かれていたり、知らないことがたくさんあった。

memo
・カシュルート
一般にユダヤ教の食物の清浄規定のことでヘブライ語で「カシェルな状態」を示す女性名詞。

・カシェルまたはコシェル
「相応しい状態」を示す形容詞。ユダヤ教戒律に適合したものであることを示す。食物に関してカシェルと言えば、食物の清浄規定(カシュルート)に適合した食べてよい食物(適正食品)のことを指す。
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