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彼が愛したケーキ職人のpepoのレビュー・感想・評価

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
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オーレンやアナト、店の客達がトーマスのケーキを食べる時のフォークの入れ方や軽い頷き、スピード等から美味しさが伝わってくる。
「シンプルすぎる」と言われて制作のための資金集めが難航したそうだけれど、この作品に多くの台詞や入り組んだプロットは必要なかったんだなと、観れば納得させられる。登場人物達が、自他に対する説明の言葉もなく、ただ内から湧き出す感情を味わっている「間」が潤沢だった。回想シーンが入りすぎない構成も、きちんと「その後」の物語に焦点が合っている印象。

イスラエルとドイツ。
「安息日に一人でいるのは良くない」と厳格なユダヤ教徒がトーマスに声をかけるシーンがある。孤独でいるのは「良くない」からと人は集団をつくり、そこから宗教が生まれ歴史が紡がれてきたのだけれど、時にそれらが個人同士のいたわり合いまでを阻害する現実も画面に映り込む。
アナトからトーマスへの「赦し」を含むラストシーン、ふと(もしトーマスが女性だったらどうだっただろう?)と考えた。当人同士の関係性が変わるぶん少し余計に時間はかかっても、アナトのたどり着くところが同じであればいいなと思った。