映画太郎

彼が愛したケーキ職人の映画太郎のネタバレレビュー・内容・結末

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【同じ男を愛した男女の物語】ということで、普通に考えたら全く共感できないドロドロの設定。にもかかわらず、ラストでは見事にどちらにも共感して、切なくも清々しい涙を誘われてしまった。ただの恋愛ドラマではなく、もっと複雑な感情を描いた人間ドラマで、深い余韻を残す良作だった。

生い立ちに陰があり、地味で不器用なトーマスが、言葉ではなく、お菓子(作り)を通して愛情を表現する姿がとてもよかった。トーマスは、たぶんアーレンを奪いたかったわけでも、彼の家庭を壊したかったわけでもない。自由で聡明なアナトは、きっと最後にそのことを理解して、愛する人を奪った敵としてではなく、同じ人を愛した同士としてトーマスを見ることができるようになり、あのラストに繋がったのではないかと思う。

映画の作風と恵比寿ガーデンシネマの雰囲気とがとてもマッチしていて、年の瀬に、いい映画を、いい映画館で観られて、とてもいい映画体験になった。