アリスinムビチケ図鑑

彼が愛したケーキ職人のアリスinムビチケ図鑑のレビュー・感想・評価

彼が愛したケーキ職人(2017年製作の映画)
3.9
以前、都内映画館で鑑賞。

ベルリンにある小さなスウィーツカフェ"クレデンツ"に、
ある日1人の紳士オーレンが訪ねてきます。

彼は妻のお土産にクッキーを買い、
ケーキを食べながら息子へのお土産をオーナーパティシエのトーマスに相談します。

それがきっかけで二人の間に愛が生まれるのですが…。


オーレンへの気持ちに踏ん切りが付かないトーマスは彼の自宅のあるエルサレムへと旅立ちます。

オープンしたばかりのカフェ"パアモン"を営なむオーレンの妻アナトの元へ、
素性・経緯を隠したまま訪ね、雇って貰う事になります。

彼女の好意で住居も紹介して貰い、
簡単な調理を手伝いながら、
彼女や彼女の息子、オーレンの母とも親睦を深めて行きます。


オーレンの生まれ育った街、
オーレンの過ごした環境、
オーレンと関わりのあった人達、家族、
きっと全てを肌で感じて、包まれて、

オーレンの着た服を着て、
オーレンの好きだった母の手料理を食べ、
オーレンに自分を重ねる事で
トーマスは心の空洞を埋めずにはいられなかったのではないでしょうか。

同じ一人の男性を愛し失った、彼の妻アナトとトーマス。

二人の出会いも必然で、寂しい心を埋めるにはこれ以上無い存在で、
惹かれる程に残酷な関係の様に思えて、胸が痛くなります。

男と女、男と男、形は違えど誰かを深く愛する気持ちに変わりは無いのだと思うと、
切ない気持ちにすらなります。


パティシエのトーマスが作るクッキーやケーキがどれも美味しそうだったり、
イスラエルの宗教事情や食文化が観れたり、
ドイツの街並みやエルサレムの街並みが観れるのも、この映画の見どころだと思いました。

ユダヤ教はコシェルと言う食物規定が厳しくて、
外国人はオーブンを使えなかったり、
禁止物も多かったり、
知らない事も多くて興味深いシーンが所々に見られました。

決して派手では無いですが、
トーマスやアナト、オーレンの家族の愛や喪失感などの心のひだを丁寧に描き、
イスラエルの文化や宗教、習慣なども垣間見る事のできる雰囲気のある、
素晴らしい映画だと思いました。