イスラエル·ドイツの合作
愛しているのに。
何故いなくなったの?
どうして作ってあげないの?
深かった。
同じ男を愛した二人の男女の物語。
いくつもの伏線が最後に繋がり、惹きつけられる。
エルサレム
カフェを経営する未亡人のアナト。
夫を交通事故で亡くし、幼い息子と二人暮らし。
この店は飲み物は出すがお菓子は無い。
アナトが得意ではないからだ。
ある日続けて来店した客のドイツ人のトーマスが作った焼き菓子を口にし、その味に感動する。
トーマスに店で菓子を提供することを提案され、お菓子作りが苦手な彼女は彼を店で雇う事にする。
店は大繁盛。
お菓子やケーキの種類も増やし、ケータリングの注文まで入るようになる。
一緒に働くにつれ、トーマスに惹かれるアナト。
息子もなついている。
夫を亡くしたアナトに幸せな日々が訪れるが…
イスラエルは異教徒の作る食べ物を店で出してはいけない。
キッチンで調理する男がドイツ人だとアナトの兄に通報され、ある日行政からの注意の張り紙がドアに貼られる。
仕事を失い、ドイツに帰れとアナトの兄に詰め寄られるトーマス。
彼を失いたくないと部屋を訪れたアナトは残酷な事実を知ることに。
トーマスが初めてアナトに見せた顔。
仕掛けられた復讐。
青天の霹靂
愛した人との出会いの真実。
そしてトーマスは「彼」を失った復讐をするつもりが…
一人の人を二人が愛してしまったら?
途中で挟まれる過去のシーンで三人それぞれに共感していた。
トーマスのアナトに対しての酷い仕打ちさえ、純粋で美しい物に感じた。
アナトの夫への平凡な愛とトーマスへの思いも素敵だった。疑う事を全く知らない人。
夫の優しさと、出張先で出会った妻とは真逆の愛情に惹かれる気持ちもとても伝わって、彼を悪いとは思えなかった。
焼き菓子
大切な人へのちょとした努力。
もし彼女にその思いやりがあったなら結末は違ったかもしれない。
もし私がアナトだったら同じように夫の優しさを当たり前だと思い、甘え過ぎていたかもしれない。
もし私がトーマスなら復讐はしなくても同じように彼を信じただろう。
そして夫
裏切っていない。
あれは事故だ。
誰も悪いとは思えなかった。
事故が全てを誤解に導いた。
復讐しきれないトーマスの誤算。それぞれが良い人で素敵だから起きてしまった不幸。
せつなかった。
日本では考えられない、イスラエルの宗教的な慣習と、根強い異教徒を排除する文化をこの作品で知る事ができた。
トーマスの一瞬で怒りが伝わるキッチンでの表情が心に残る。
登場人物がみんな魅力的で感情移入した。
観て良かった。
心に残る作品