ベルサイユ製麺

食べる女のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

食べる女(2018年製作の映画)
3.4
“食べる女”スか。人口のだいたい半分ぐらいが該当しそうですね。これは共感を呼びそうですよ!


数人の大人の女の人が美味そうな料理を作っては食べる。中には性交をする者もいた。最終的にはなんとなくポジティブな空気感が漂った。なんとなく“善い”ものを観たような、いや見せつけられたような雰囲気がすごかったのだ。


主人公的な立ち位置に、
⚫︎食べ物にまつわる書籍だけを扱う古本屋を自宅で営む傍ら、作家(どっちがメインかは作品からは読み取れません)でもある敦子(キョンキョン)。
そして、敦子の家に集まる人々…
⚫︎ 敦子の担当編集者で、バリっと仕事の出来る…何か秘密でもあるのだろうか?どんなに働いても疲れないような…圭子(沢尻エリカ)。
⚫︎小料理屋を営む傍ら若い料理人志望者を夢もろとも食い散らかすバーバ・ヤガこと美冬(鈴木京香)
⚫︎ダラダラ続く男に求婚され悩むテレビ局のAP 多実子(前田のあっちゃん)
を一軍メンバーとし、それに加えて⚫︎ひたすら安いお手軽女の広瀬アリスや⚫︎身体の一部を見せつけて口を糊する壇蜜⚫︎料理が出来なくて夫に出ていかれるシャーロット・デッド・フォックス…などのエピソードが絡む構成。
最初の食卓を囲むシーン。4人の正面からのショットが次々切り替わる演出は『バッファロー’66』オマージュ?お話しの雰囲気は全然違います。

さて。基本的には“丁寧な暮らし”を推奨する映画です。丁寧に、美味しい料理を作る女性は実直な男性との縁や良いセックスの機会にも恵まれる…とまでは描いていないかもしれませんけど、まあ肯定的に描いてはいます。そりゃそうか…。
そしていきなり批判的な事を書いてしまうようですが、貧困層は出てきませんね。別に描きようが無い訳でも無いと思うけどな。『凪のお暇』みたいにね。
監督が男性で有る事にも、どうもモヤモヤを感じてしまいました。まあ、原作者さんが脚本やられているので描写のフェアさなどはある程度担保されているのでしょうが。
あ!料理は実際美味しそうですよ!太刀魚なんて凄く美味しそうですねー。余談ですが私の父親は太刀魚が食べられません。なんでも子供時代、海岸を歩いていると人だかりが出(自主規制)

主人公の敦子はどうやら身の回りの生活を題材にしたエッセイみたいなモノを執筆してるみたいで、言わば作品世界の”神”的な立場。あんまり本人のエピソードは有りません。その他の一軍メンバーも基本的にはまあ現実にありそうな恋愛話があったりなかったりってぐらい。
で、どちらかといえばその他のキャストが、私生活の悩みを料理を通して解決したりしなかったり…かな。ちょっとハッキリ覚えてませんが。
個人的に印象に残ったのはシャーロット・デッド・フォックスさんのエピソード。旦那さんの稼ぎがよく生活には不自由せず、時間もたっぷり有るのにインスタントとコンビニの有りものだけで済ますのに我慢出来ず、遂に旦那が飛び出していってしまう、と。で、放心状態で彷徨っていたところを美冬に声をかけられ料理修行をし、旦那の愛を取り戻す…というお話。完全なる美味しんぼです!…そんなに料理って大事ですか?それで捨てるような男はやっぱりクズだから復縁どころか離縁を喜ぶべきだろ!!…因みに旦那さんは“全中国人民の敵”こと池内博之です!2人の処理的なfuckシーン有ります!うぐぐ、誰得とはこのことか…。
広瀬アリスさんはここでもだらしない、ユルい女を演じてます。ホント高感度高いわー。

作品のトーンはとってもテレビドラマ的で、近年ちょっと見ないくらい台詞をカッチリと組み上げて朗々と語り上げる、ある種舞台っぽい(←決めつけです。すいません)雰囲気なのですが、今作に限ってはそれを然程イヤだとは感じませんでした。〈たまにはこういうの観とくか…〉って感じです。ラストシーンはちょっとビックリしましたが。
作中何度か「コレ、男が観てて良いの⁈」って思わされるシーンが有りましたね。“枯れた井戸”の話とか…。…ホントに良いの⁈ねぇ!

などなど、褒めているのか貶しているのか我ながら分からないトーンになってしまってますが、一点、断言できるのは、
★猫のしらたまちゃん is 正義!!!
という事に尽きますな。白くてだるだると可愛くて。なので、しらたまちゃんのエピソードを入れてないのは大きな手落ちと言えよう。…それか、スピンオフだな⁈