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ラ・チャナの小のレビュー・感想・評価

ラ・チャナ(2016年製作の映画)
3.8
スペインのフラメンコダンサー、ラ・チャナの生涯を描いたドキュメンタリー。天才的なリズム感を持ち才能を開花させるも、極貧地区の封建(男性)的で自分の希望が通らないヒターノ(ジプシー)社会は彼女に存分な活躍を許さず、ある日突然、表舞台から姿を消す。抑圧された人生の中で、唯一自由になれるのが踊っているとき。膝を痛めた今なお、パフォーマンスを披露し、後進の指導にあたる彼女の姿を映す。

もちろんフラメンコを踊ったことはなく、ラ・チャナという人物についても映画で初めて知った。そんな自分にとって本作は、抑圧された女性がもがきながら自分を解放していく物語。彼女にとって踊ることとは生きることと同義で、生きている以上、踊りから離れることなんてできない。それ故、踊れなかった時期の内面について、もう少し深掘りして欲しかった気もするけれど、ひょっとすると見落としているのかもしれない。

過去の映像はさすがに古いけれど、それでもパフォーマンスの迫力を垣間見ることはできる。抑圧された魂の咆哮みたいな演技は今のダンサーにはできないだろう、という気がする。全盛期の姿を目の前で見たら、きっとボーっとしてしまいそう。ハリウッドへの進出が阻まれたことがとても残念。

<超貴重特別映像>の<現在世界で最も賞賛されているフラメンコダンサーの一人、カリメ・アマヤへのレッスンシーン>付き上映で観たけれど、その後の回で応援上映があり、フラメンコダンサー姿の人が多数。ひょっとしたら、皆さん立ち上がって踊ったのかしら。そちらの回で観たかった…。

●物語(50%×3.5):1.75
・天才が困難に直面しながら、立派に人生を全うするという点では、ドラッグにハマるミュージシャンのドキュメンタリーよりも後味スッキリ。

●演技、演出(30%×5.0):1.50
・演技そのものは迫力満点ではないかと。キャラもなかなか。

●画、音、音楽(20%×2.5):0.50
・仕方ないけれど、一番いいときの素材がさすがに古い。
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