菩薩

ラジオ・コバニの菩薩のレビュー・感想・評価

ラジオ・コバニ(2016年製作の映画)
4.0
瓦礫の下には屍体が埋まつてゐる!
これは信じたくないことなんだよ。何故つて、美しい街があんなにも無残に破壊の限りを尽くされるなんて信じられないことぢやないか。俺はあの悲惨さが信じられないので、この70分不安だつた。しかしいま、やつとわかるときが来た。瓦礫の下には屍体が埋まつてゐる。これは信じたくないことなんだ。

破壊の限りを尽くされたコバニの街。しかも天災では無い、人災、人の手による災い、そして自分達の街を取り戻す為の戦いの結果だ。街が戦場になると言うのはそう言う事なのだ、生活の全てが破壊され、多くの命が奪われ、皆の心が死んで行く。千切れ、無残に腐り、掘り起こされて行く敵の屍体、それを処理せねばならぬのも、そこでまた新たな生活を築こうとする彼ら自身である。目を顰め、鼻を塞ぎながら、カメラを見つめた少年は何を思うのか、屍体と共に成長する少年・少女達は、どんな大人になるのだろうか。それでも邪智暴虐な偽りの王が除かれた後の街に人々は帰ってくる、人々が帰ってきた街に「おはよう、コバニ!」の明るい声が響き渡る、そして皆の新たな生活が始まる。走らなくて良い、一歩一歩で良い、着実に復興に進んで行けば良い。貴方達の思いは確実にその子達に引き継がれ、新たな世代が新たな幸福と希望をその街で見つける事だろう。戦いは形を変え続く、戦争に勝者はいない、それでも街も人も、まだその地で生きている、この街にはきっと、桜以上に綺麗な花が咲く事だろう。