ちろる

ラジオ・コバニのちろるのレビュー・感想・評価

ラジオ・コバニ(2016年製作の映画)
3.9
私たちは人を信じ、生きることを諦めません。
ラジオコバニは、自由の声
崩れた瓦礫の街中で流れるのは生き生きとした若い女性の声と陽気な音楽。

ISの占領下となり、数ヶ月にわたる襲撃の後に独立を取り戻したコバニ。
もう、頑張る気力すら起きない壊滅的な被害が故郷に訪れた時に人は何ができるのだろうか?
あと一歩未来を見るためには、今共に手を取り合える仲間の存在がなによりも励みになる。
辛いのは自分たちだけじゃない。
瓦礫だらけの街にも、平等に朝が訪れて、明けない夜はないのだということにも気づく事が、残された人々には必要で、
1人じゃないことを教えてくれるラジオ特有の温かさを改めて教えてもらった。
毎日呼びかけられる「おはよう」がどんなに幸せか、この街のみんなは知っている。

描かれる戦闘シーンや焦げた死体の映像、無機質な感情で街を彷徨う人々の映像は苦しいけれど、私たちは目を背けてはいけないと思って映像に向かっていたのだけど、
彼らは私たちが思うよりもずっと強くて、逆に元気付けられてしまっていた。
沢山の死や悲しみの先にも幸せのカケラが必ずあって、それを丁寧に拾い上げるようなディロバンの姿は美しくて、彼女たちの若いエネルギーがこの街に命を吹き込む。
完全な再建までは時間を要するのだとしても、温かい息吹はこの街に伝染して、力強い彼らのいる街なら、きっといつかまた美しい街へと戻るはずだと希望を持てる作品だった。
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