井中カエルand物語るカメ

天才作家の妻 -40年目の真実-の井中カエルand物語るカメのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

妻の側に立つ意見が多いようだが、私はそんな単純な物語ではないと感じた。
この夫がいるからこそ妻の筆が載り、この妻がいるからこそ夫はその名声を手にすることができた。
夫婦関係や創作関係は、簡単に『旦那が悪い』と言えるほどに単純なものではない。

夫は夫で自分のアイディアがあってこその名誉だと信じるだろうし、妻は自分の技術があってこその名誉だと思うだろう。その両者ともに間違いではなく、もはやどちらの功績でどちらがより重要なのか、まるでわからなくなっている。
それはまさしく、夫婦関係と同じではないだろうか?
どちらがより苦労したから成立していた、などという単純な割り切り方はできないのだ。

その微妙な妻の心情を演じきったグレン・クローズの演技はアカデミー主演女優賞ノミネートも納得ものだった。
映画としては退屈なシーンもあるためにこのスコアになったが、描いていることの重さ、尊さは一級品のものである。


最後にネタバレになるがラストについて言及させてほしい。
ラスト、妻は飛行機の中でノートをめくると白紙のページを見つめる。
ここは彼女の無限の未来を描くと捉える人もいるかもしれない。
しかし、私は多くの出来事の末に彼女が書くこと無くなってしまった、と捉えた。
作家としては、あの瞬間に全てが終わったことを示す描写のように受け止めた。
あの夫婦あっての名誉であり、妻だけでもどうにもならないことを示したのだろう。