まめまめまめちゃん

天才作家の妻 -40 年目の真実-のまめまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
とある老夫婦の物語。
妻は夫の不倫ののち後妻となった立場。小説の書き方を教わっているうちに…という訳ですが、妻の方が才能があり、夫はネタ提供者、妻がネタを昇華させ執筆する立場となり気づいたら孫が生まれる歳になっていました。
書けないストレスから浮気をやり散らかしてきた夫。それさえもネタにしてやろうと努力を重ねた妻。女流作家が売れない時代に自ら影となる選択をした訳です。
ストックホルム滞在中に、2人の関係は急激に形を変えます。夫の伝記を書こうと夫妻を調べているうちに真実に気づいたライターが揺さぶりをかけるのです。心底動揺したのは妻<<<息子<<<夫。「僕がノーベル文学賞を取った」「妻は小説など書かない」「息子は発展途上の小説家」などの失言だらけの前半から一転し、レセプションで「この賞を妻に捧げる」等々の自分かわいさ発言を聞き妻が夫に放った言葉とは…

夫の「ブタみたいに食ってばかり」な様子や、女とあらば隙を見て手を出す様子からは、欲望を理性でコントロールできない典型的なクズ男ぶりが伺えます。それに対し妻は夫が損をしないよう振る舞い、綺麗につくった笑顔の裏の心情が読み取りにくい極めて理性的な女性でした。その笑顔が崩され微妙な心情と表情の連続となる後半からラストにかけてがグレン・クローズの演技の真骨頂。人生そのものを他人だけでなく夫からも否定されかけた女が、ついに感情をむき出しにしたかと思えば引っ込めざるを得ないアクシデントの連続。「愛してる」の言葉が真実かって?この理性的な女性がこの期に及んでトドメを刺すようなことを言うはずがない。それが彼女の人生でありプライドなのですから。

まだ何も書かれていないページには、これからいくらでも化けることのできる小説家の新たな第一歩が記されるのでしょう。

小説も論文もプレゼンも何が一番大変かって、形にすることです。形にすればいくらでも加筆修正できますが、ネタやアイディアのままでいくらオレはやればできると吠えたって評価のしようがないのです。書けない苦しみはあったかもしれませんが、この妻が背負ってきた作品への責任、さまざまな重圧を思うと、とても夫婦の負担が五分五分だなんて言えません。帰途の機内での妻の表情が清々しく見えたのは私だけでしょうか。