Smoky

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのSmokyのレビュー・感想・評価

4.1
あふれる映画愛、圧倒的な情報量、まさかの結末、そして、最高のわんこ映画。

従来のタランティーノ作品とは若干毛色が異なる印象。よく知られた実話をベースにしているだけに、ストーリーテリングでグイグイと引っ張るよりも、画面に散りばめられたディテールの積み重ねとキャラクターの演技で魅せる感じ。

マーゴット・ロビーの無垢な美しさは、まるで初恋の女の子への憧れを描写しているようだし、レオ様は…相変わらず眉間にシワを寄せて暑苦しいくらいに全力で演じているし、撮影時は55歳ぐらいのはずのブラピは『ファイトクラブ』時代を彷彿させるムキムキの肉体に鍛えて古き良き時代のアメリカの理想の男像を体現している。

特に、クリフ・ブース役を演じたブラピは出色の出来。本作の演技で「俳優として」アカデミー賞をやっと獲れたのも納得(4回目のノミネート、ちなみにプロデューサーとしては受賞済)。レオ様演じるリックのスタントマン兼付き人として公私共のバディであり、めちゃくちゃ強くて(ブルース・リーよりも!)、カッコ良くて、人が良くて、頭もキレる。

飼っているピットブルのブランディとクリフの関係は、そのままクリフとリックの関係にも重なる。クリフは、仕事でリックの「危険な場面の身代わり」をやり、プライベートでもラストでリックの「危険な場面の身代わり」をやり、ブランディはクリフの「危険な場面の身代わり」をやる。親身で忠実で強い相棒。カタルシスと驚きに満ち溢れたラストは、見事な入れ子構造と仕上げの火炎放射器(笑)

今では信じられないけど、映画俳優がTVドラマに出演するのが「都落ち」と見做され、CGの無い時代だからスタントマンは今よりも重要な地位を占め、同じ欧州を出自にしながら、イタリアの西部劇はバカにされポーランドの気鋭監督(後に性犯罪で米国出禁になる)は持てはやされていた「昔々のハリウッド」の物語。
Smoky

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