Tラモーン

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのTラモーンのレビュー・感想・評価

4.2
どうして俺は連休最終日にクソ長映画を観てしまうんや…。


舞台は1969年のハリウッド。50年代の人気テレビドラマ『賞金稼ぎの掟』で人気を博した俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は当時の勢いを失い、今では単発での悪役出演が続きキャリアに苦しんでいた。彼のスタントマンを務める親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)も同じく時代の煽りや過去のトラブルが原因で仕事を得られずにいた。なんとか仕事を得るため奮起するリックの隣家に、今をときめく映画監督ロマン・ポランスキー(ラファエル・ザビエルチャ)とその妻で女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)が引っ越してくる。夜な夜なパーティに繰り出す2人を、世知辛い現実に苦しむリックは羨む。


めちゃくちゃ面白かった‼︎
うわ〜、こういう映画だったのか‼︎

「シャロン・テート事件」のことあんま知らんし長いし…と迷っていたけど、タランティーノ節全開かつ、めちゃくちゃカッコイイ古き良き男の友情物語だった。

タランティーノの得意とするダラダラした会話が、この作品で言うところの前半2時間なのかも。
人生の曲がり角で奮起するリックとクリフの関係性と日常を描きながら、人物描写を深掘りしていくことでラストシーンへの丁寧な布石を感じた。

"駐車係の前で泣くな"
"チクショウ人前で泣いてやる"

キャリアの底が見えてしまい焦るリック。かと言ってマカロニウエスタンには出たくない!悪役として望んだ若手俳優相手のテレビドラマでもセリフのミスを連発してしまい気が滅入る。子役に泣き言を吹き、控え室で自分にブチ切れる始末。情けない泣きの演技がレオ様の綺麗なブルーの瞳と、中年の哀愁に映える。

"全盛期を過ぎた。少しずつ受け入れないといけない"
"俺は惨めなアル中だ!3、4杯でなく8杯だ!"

そんな彼を支えるクリフが本当にいい奴。スタントマンとして雇われてるのに、リックの運転手も務めるし、家仕事もキッチリこなす。彼自身もスタントマンとしての仕事が減っているのに、過去を無駄に悔やまないし、明るい性格は間違いなくリックの助けになっていた。ブラピのカラッとした演技と優しい表情、光る笑顔とアロハがめちゃくちゃカッコイイ。ブルース・リーと喧嘩するとこ爆笑だった。

"お前はリック・ダルトン様だ。忘れるな"

渾身の名演技でリックが嬉しそうにするとこまで合わせて2人の友情が最高なんだよ。子役に賛辞を送られて涙ぐむレオ様がまたいいのよ。

"リック・ダルトン様だ(泣)"


そんな2人の日常と、ポランスキー夫妻の日常を描きながらストーリーは淡々と(ダラダラとかな)進む。
その中でも不穏なヒッピーたちがマンソンファミリーの存在を匂わせる。

マーゴット・ロビーが演じたシャロン・テートは少女性すら感じる女性で、自身が出演した映画を劇場で楽しそうに鑑賞し、他の観客が好リアクションを見せれば喜ぶ無邪気さを持つ。
こんな女性が殺されちゃうのか…と史実を知る我々はなんとなくどんよりした気持ちを心のどこかに抱えながらこの長い作品を観るわけだ。

余談だけど、タイヤをパンクさせたヒッピーにスペア交換を指示するとこのブラピの"No."がめちゃくちゃ好き。


リックとクリフの最後の夜。そしてシャロン・テート刺殺事件が起こるその日、突然ノンフィクション番組のように当日の詳細な時間や、登場人物たちの動きにナレーションが入り一気に画面に緊張感が増す。
うわ〜、リック絡まないでくれ!クリフ大丈夫か!と思ってたらあの怒涛のバイオレンス展開wwwwwwwwww。阿鼻叫喚と大量流血の中であんなに笑ったのは初めてかもしれないwwwwww。そしてトドメのプールのシーンは本当に腹抱えて笑った…。

"燃えちまえナチども!"

なるほど…。こうなる伏線は丁寧に張られていましたわ…。ワンちゃん大活躍で安心。

兄弟以上妻未満の男2人の友情に痺れるイカしたラストシーンも最高。

"明日ベーグルを届けてくれ"
"明日会おう"
"いい友達だ"
"努力してる"


『イングロリアス・バスターズ』でもそうだったように、映画の中の暴力で、実際の暴力を全否定するタランティーノの強いメッセージを感じたし、タラちゃんのレトロへの郷愁が込められてて素敵な作品だった。

それにしたって音楽と車運転してるシーンがカッコ良すぎるんだよもう!
Tラモーン

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