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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのabeeのレビュー・感想・評価

4.5
【little girls from Sweden dreams of silver screen quotation
and if you want these kind of dreams,it's Californication】

流石タランティーノさん。
我々の想像の斜め上どころか大気圏を超えます。
ギャンブラーだね。

これは「シャロン・テート」という女性の名前を聞いて「何か」を連想できるかで楽しめるかどうかが決まってしまう、ある意味賭けです。
私のような人間はトレーラーを見て「シャロン・テート」という名前が出ればある程度映画の方向性には気付きます。
しかし、私と同世代より下の日本人でこの名前に馴染みのある人はそんなに多くは無いはずです。
「イングロリアス・バスターズ」のヒトラーとはわけが違います。
「悪名」が国境や年代を超えるのは常ですが、その下にある犠牲というものは風化しがちです。
特にこの「悪名」は私の世代は音楽好きなら誰もが知る名前でしょうがその毒牙にかかった人々に関してはあまり知られてないのではないでしょうか?

とりあえず何が素晴らしいかって自ら立てたフラグをことごとくへし折る斬新すぎる脚本ですよ。
なんてたってこのトレーラーすらフェイクフラグである可能性がありますよ…⁇
皆さん、気をつけて‼︎
何一つ想像した通りにオチない‼
まぁタランティーノさんですからこれくらい想像できたろうって話しですが。

でもですよ、このハリウッドの「黒歴史」の一つに真正面から立ち向かった作品をどこかで求めていた部分がありました。
なのでこんな救いようのない歴史をタランティーノはどうやってオトすのだろうととても考えて鑑賞していました。

えぇ、流石です。そこは力業です笑
でも、その力業も決して計算されていないわけではなく、そこもちゃんとフラグが立ててあります。
上映終了後、男性2人組がこの作品の感想として「肩の力抜いて映画作りすぎだろ〜〜ww」と言っていました。
肩の力が抜けているなどとんでもない!
このフラグ立ての妙。大きなフラグはことごとくへし折り、小さなフラグを活かして大きな笑いを作り出す。

この作品に関しては無意味に感じる部分が一切ありませんでした。
へし折るためにフラグを立ててますから。全てに意味があります。

そして主演2人のキャラクターが素晴らしい。
女々しいリックと男臭すぎるクリフ。
「恋人以上夫婦未満」とはよく言ったものです。
世の女子たちが鼻血吹きますよ、そんなのww

そして作品を彩るのはハリウッド史にその名を遺す名優たち。そしてイジリ倒す‼︎
特にクリフとブルース・リーのタイマンは爆笑必至。
スティーブ・マックィーンは似てない‼︎‼︎笑

ということで、この作品はあくまで「フィクション」。
タランティーノは何故歴史を捻じ曲げるのか。
それはハリウッドへの愛と理想。
そしてありもしない現実を作り上げたのはハリウッドという世界は理想郷であり最終的にはファンタジーでなければならないというメッセージなのかもしれません。
いつだってファンタジーの世界では勧善懲悪、悪が敗者であってほしいと、そんな理想が透けて見えるのです。

それにしても、タランティーノさんは本当に映画人ですね。
実は彼の作品を初めて劇場で観ましたが、暴力シーンの画と音の迫力が別格でした。
だからこそ抉れた皮膚の質感や飛び散る血飛沫に目を覆いたくなるものの、本当にトマトを投げつけるが如く顔色一つ変えず人の頭を壁に叩きつける様はまさにグロッキーーーっ‼︎
抑圧された暴力性が芽を出すでしょう‼︎
abee

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